ファンティーヌはコゼットと一緒にあてもなく仕事を探して旅をしていた。途中通りかかったモンフェルメイユの街でファンティーヌは仕事を探すが、田舎街であることに不景気、子連れのために「仕事はない」と門前払いされてしまう。
途中寄ったパン屋の店番に「働くあてはないか」と聞いてみたところ、「北のモントルイユ・シュル・メールの街には景気のいい工場がある」との答えが返ってきた。しかし店番は、その工場は子供連れでも働けるかどうかまでは知らなかった。ファンティーヌはそこへ働きに行くことを決意するが、まだ幼いコゼットを連れて行くのは無理だった。
それはわかりながらも、無理してその街に行こうとしていた母と娘は、一軒の宿屋の前を通りかかる。その宿屋の前では宿屋の娘のエポニーヌとアゼルマ姉妹が遊んでいた。コゼットはすぐにその姉妹と打ち解け遊びだした。止めようとするファンティーヌに「いいんですよ」と言いながら宿屋の女将が寄ってきた。女将はすぐさま「お泊まりですか?お食事ですか?」と商売にかかるが、ファンティーヌの事情を少し知ると無愛想になり、話をまともに聞かなくなった。少し離れたところで“兵士が上官を介抱している絵”を描きながら聞き耳立てていた宿屋の亭主が「子供を預けるのはどうだ?」と提案する。「ファンティーヌ一人なら仕事もすぐに見つかるだろう」と言うのだ。宿屋の女将は亭主の言葉の意図が分からずに声をあげるが、亭主が考えてることをコソコソ話で伝えると態度がガラっと変わる。宿屋の夫妻はファンティーヌの不安を煽り、母子の将来のためにコゼットを自分たちに預けるように勧める。ついにファンティーヌは預けることを決意し、食費として1ヶ月7フランを半年分と“もしもの時の時のための保証金”15フランの計57フランを宿屋の夫妻に支払う。
コゼットは母と別れることを知ると泣きだすが、仕方ないと解ると諦め、母の旅立ちを見送った。しかし、ファンティーヌがいなくなると宿屋の夫妻は急に顔色を変えた。テナルディエがファンティーヌに娘を預かるかわりに大金を請求したのは、期限が迫っていた借金を返済するためであった。また女将はコゼットに“仕事着という名のボロ”に着替え宿屋の前の掃除をするよう厳しく命じるのであった。
「景気のいい工場がある」というモントルイユ・シュル・メールに着いたファンティーヌは工場の場所を聞くとともに工場主のマドレーヌの話を聞く。マドレーヌさんは「3年前にふらりとこの街にやってきて黒硝子の工場を作り、発明や工夫のおかげで今ではその工場は大繁盛、今では市長をしている」とのことだった。
話を終えファンティーヌが去ろうとしたその時、広場が騒がしくなった。「泥棒だー!!」とパン屋がパンを持った少年を追いかけてきたのだ。その少年はすばしっこく、なかなか捕まらない。しかし、突然出てきた一人の幅広の大男が少年の行く先をふさぎ、少年とぶつかった。少年は倒れこみ、逆上したパン屋に殴られそうになるが、その大男が少年をかばう。大男は少年に盗んだパンをパン屋に返すように言い、その場は丸く収まる。ファンティーヌはパン屋の言葉からその大男が工場主で市長のマドレーヌだと知るのであった。
少年を無理やり連れ帰ったマドレーヌは、その少年にパンを出し、「こんな馬鹿なことしやがって!」と言う少年に「馬鹿なことではない。腹をすかした家族のために、罪を犯そうとしている者を放っておくわけにはいかない。人間として当たり前のことだ」と言い返す。しかし、マドレーヌはマドレーヌ自身がかつてジャン・ヴァルジャンと呼ばれていたころに受けた施しに比べればまだまだだと考えていた。マドレーヌは少年に名前を訊き、「君を雑用係として雇いたい」とその少年アランに言う。アランは「何言ってんだよ!来るもんかよ!」と言い、立ち去った。
一方、工場で働くためにモントルイユ・シュル・メールの街にきたファンティーヌは、面接を受けていた。そのときに、働けないと困るので「家族は居るか?」との質問に「居ません」と答えてしまう。その結果、彼女は工場で働けることになった。あてがわれた部屋でファンティーヌはコゼットをことを思っていた。
しかし、コゼットはテナルディエの宿屋で早速こき使われていた…。
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